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第4回:ロック付き安全スイッチとは(前編)

IDEC セーフティテック エキスパートチーム

前回は、安全スイッチ(インターロック・スイッチ)について安全リミットスイッチなどとの比較を交えて解説しました。これらのスイッチでは扉にロックを掛けられないので、機械の稼働中に扉を開けることが可能です。従って、扉が開いたことを検出してから機械の危険源が停止するまでの時間に見合った安全距離を確保する必要があります。今回紹介するロック付き安全スイッチは、そもそも機械の稼働中に扉を開けられないようにするためのものです。

ロック付き安全スイッチの用途

図1:代表的なロック付き安全スイッチ

代表的なロック付き安全スイッチの概略形状を図1に示しました。一般的な安全スイッチと同じく、ロック付き安全スイッチも本体とアクチュエータが分離しており、アクチュエータを扉(可動部)側、本体は固定側に取り付けます。本体の内部にはロックを掛けるための構造があるので、一般的な安全スイッチよりも大きくなっています。

図2に、安全スイッチを工作機械類の扉に設置した例を示しました。機械の運転中は扉をしっかりロックし、完全に停止した後で扉を開けられるようにします。すなわち、慣性が大きくてすぐに停止できない機械では、ロック付き安全スイッチを用いて動作が完全に停止するまで機械的危険源から人を安全に隔離しておく必要があります。

ロック付き安全スイッチのこうした使い方は、大型マシニングセンタや旋盤の扉、産業用ロボットの周囲に設置する安全柵の扉などでよく見られます。機械の運転中にロックを解除すると重大事故につながりかねない、リスクの高い機械で多く使用されます。機械的危険源の他に熱的危険源の隔離にも用います。

図2:ロック付き安全スイッチの代表的な使い方

ロック付き安全スイッチの構造

ロック付き安全スイッチの標準的な構造を図3に示します。

図3の左半分は、一般的な安全スイッチ(前回を参照)の構造とほぼ同じです。扉に取り付けるアクチュエータの動きと連動してカムが回転し、扉の開閉を検出する接点(C部)により、電気信号のオン/オフを制御します。一方、図3の右半分はアクチュエータのロック/ロック解除を司る部分(D部)です。図3は扉が閉まっている状態を示しており、ソレノイドは無励磁(電圧が加わっていない)状態です。圧縮ばね(E)の復元力によってロッド(B)がカムの凹部とかみ合っているので、カムの動きは制限されており、アクチュエータは抜けません。

さらに、機械が稼働する条件には、扉が閉じていることに加えてロックが掛かっていることも必要です。従って、C部とD部を直列に接続することによって、どちらかがオフになると信号が遮断されるようにします。

ここで、ソレノイドについて簡単に説明します。ソレノイドは、電気エネルギを機械エネルギへと変換するものです。図4に示すように、コイル(電線を巻いたもの)に電流を流すと、そこに磁力が発生し磁性体のロッド(B)を直線的に移動させます。図4の場合、磁力が発生するとロッド(B)は右に移動しますが、磁力がなくなると圧縮ばね(F)の作用によって左に戻ります。

図4:ソレノイドの動作説明(スプリング・ロックタイプ)

ロック付き安全スイッチと扉の開閉

構造を理解したところで、ロック付き安全スイッチと扉の開閉の関係を説明します(図5)。

<状態1>
 扉が閉じてロックされており、機械は稼働している状態です。アクチュエータが本体に挿入されているので、カムが回転しC部が閉じています。コイルは励磁されておらず、ロッド(B)は圧縮ばね(F)の力でカムの凹部とかみ合い、D部も閉じています。その結果、端子1から端子2へ信号電流が流れており、扉が閉じてロックが掛かっていることを意味します。機械は、稼働できる状態、または稼働を継続しても問題ない(安全である)状態です。

<状態2>
機械が停止した後で、ロックが解除された状態です。機械が停止した後、外部のスイッチがオンになってコイルが励磁されている状態で、D部は開いています。その結果、信号電流が遮断され、機械は稼働できないことを意味します。なお、コイルが励磁されているので扉は開けられます。

<状態3>
アクチュエータが抜かれて、扉が開いている状態です。アクチュエータが抜かれるとカムの回転が戻り、ロッド(A)が下がってC部も開きます。ロッド(B)は、コイルが励磁されない場合でもD部をオフにする位置で固定されます。扉が開いているときはC部およびD部が開きます。確実に機械の停止を維持するために二重に遮断します。

その後、機械を再稼働させるには、扉を閉めて状態1に戻します。扉を閉めるとカムは再び回転し、ロッド(A)が上がってカムの凹部にロッド(B)が組み込まれ扉は自動的にロックされます。C部とD部が閉まり、端子1から端子2へ電気信号が流れ、機械が稼働してもよい状態となります。

ただし、扉を閉めただけで機械が稼働してしまう事態は、安全上避けなければなりません。そこで、オペレーターが周囲の安全を確認した上で安全な位置に設けられた別のスタートボタンを押してからでなければ機械を再稼働できないようにしておく必要があります。

次回の後編では、扉をロックするための構造や、ロック付き安全スイッチを機械に取り付ける上で考慮すべきことを解説します。