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第3回:安全スイッチ(インターロック・スイッチ)とは

IDEC セーフティテック エキスパートチーム

工場内で機械設備が稼働しているとき、人は機械の危険源から離れて安全に隔離されている必要があります。機械設備の中で作業を行わなければならない場合、機械が完全に停止したことを確認した上で入ります【図1】。これを「隔離」または「停止」による安全防護といい、安全確保上の基本的な考え方になっています。

図1:「隔離」または「停止」による安全方策

【図2】の安全スイッチは、工作機械の正面扉や産業用ロボット周囲の安全柵の扉部分などに取り付けられ、扉の開閉検出を行う目的で使用されます【図3】。扉(可動側)に取り付けられた専用のアクチュエータが、扉を閉めることによって安全スイッチ本体に挿入され、本体内の接点が切り替わって信号を伝えます。従って、扉が閉まっている場合だけ機械の稼働を許可し、扉が開いている場合は停止状態を維持するシステムの一部として使用されます。

  • 図2:安全スイッチ
  • 図3:安全スイッチの取り付け例
図4:代表的なセーフティ・リミットスイッチ

一方、安全スイッチと類似しているものとして【図4】に示すリミットスイッチが挙げられます。このリミットスイッチは、扉などのスライドする物体がアクチュエータに当たり、それによってアクチュエータが回転したり上下に動いたりすることで本体内の接点が切り替わって信号を伝えます。リミットスイッチには、安全防護という観点から以下の2種類があります。

[1] 安全スイッチと同様に、アクチュエータなどの可動部分を全て剛性部品で構成し、直接開路動作型(*)のノーマルクローズ(NC)タイプの接点(NC接点)を持ったセーフティ・リミットスイッチ
[2] 扉・窓の開閉や、スライドする物体の通過および位置検出を行う汎用リミットスイッチ

そのうち、[1]は安全防護目的で使用できます。しかし、[2]はNC接点を持っていても直接開路動作型ではないなどの理由により、安全防護目的では使用できません。

*: 直接開路動作型
アクチュエータを抜いた(ボタンを押した)ときの操作力が直接NC接点に作用して接点を強制的に開き、電流を遮断する構造のもの。

安全スイッチの動作

安全スイッチは【図2】のように、本体と専用アクチュエータが分離した構造になっています。

【図5】の左側に扉が閉じたときの安全スイッチの動作を示しました。扉が閉まってアクチュエータが本体に挿入されると、内部のカムが回転してNC接点を閉(ON)にして信号電流が流れるようになります。この電流は扉が閉まっている場合だけ流れ、機械が動いてもよいという許可を意味します。

一方、【図5】の右側は扉が開いたときの安全スイッチの動作です。扉が開くとアクチュエータは本体から抜かれ、カムが元の位置に戻ってNC接点を開(OFF)にして信号電流を遮断します。これは、扉が開いているので機械が動いてはいけないことを意味します。仮に扉が取り払われても、アクチュエータが抜かれた状態であることに変わりはありませんので、電流は遮断された状態になります。

図5:扉の開閉と安全スイッチの動作

安全スイッチはカムなどを含め剛性部品だけで構成されており、直接開路動作機構のNC接点が搭載されています。従って、たとえ接点が溶着しても、扉が開くとアクチュエータに引っ張られてカムが戻り、接点が強制的に開かれて電流を遮断します。

セーフティ・リミットスイッチの動作

【図6】の左側に扉が閉じたときのセーフティ・リミットスイッチの動作を示しました。扉が閉じてアクチュエータが元の位置に戻ると、NC接点が閉(ON)となって信号電流を流します。この場合、安全スイッチと同様に機械の起動が可能なことを意味します。一方、【図6】の右側は扉が開いたときのセーフティ・リミットスイッチの動作です。扉が開きアクチュエータが押し込まれると、NC接点は開(OFF)となって信号電流を遮断します。この場合は、機械を起動できません。

図6:扉の開閉とセーフティ・リミットスイッチの動作

このように、セーフティ・リミットスイッチは安全防護用に使用されますが、【図6】の左側で扉がとり払われた場合はそれを検出できず、NC接点は閉じて機械が起動できる危険な状態となってしまいます。従って、扉が外されないようにする確実性の高い対策が必要です。それについては、セーフティ・リミットスイッチを複数個使用することで扉の有無を検出する方法が採用されています。今後、本コラムで紹介する予定です。

汎用のリミットスイッチを使用した場合の動作と問題点

なぜ、汎用リミットスイッチは安全防護に使えないのでしょうか。その理由を、NC接点およびノーマルオープン(NO)タイプの接点(NO接点)を用いた場合に分けて説明します。

<NC接点(直接開路動作型ではない)を用いた場合>
構成は、【図6】のセーフティ・リミットスイッチがNC接点の汎用リミットスイッチに置き換わったと考えてください。この場合、扉が開いても接点が溶着していれば接点が開く保証はありません。ばねなど弾力性を持った部品がアクチュエータやボタンの操作力を伝達する経路の中にあれば、そこで動作が吸収されてしまいます。

<NO接点を使用した場合>
NO接点の汎用リミットスイッチを使用した場合を【図7】に示しました。扉が閉じるとアクチュエータが押されてNO接点が閉(ON)となり、扉が開くとアクチュエータが戻ってNO接点が開(OFF)となるので、同じように使えそうに思えます。しかし、NO接点が溶着したり、アクチュエータが針金などで縛られたりすると、扉が開いていても接点が閉じた(ON)状態となり、危険な状態になってしまいます。よって、汎用リミットスイッチは安全防護には使えないのです。

図7:扉の開閉と汎用リミットスイッチの動作

安全スイッチなど使用上の比較のまとめ

表に安全スイッチ、セーフティ・リミットスイッチおよび汎用リミットスイッチを安全防護目的で使用する場合の比較を示します。基本的な考え方は右記のようになります。

■安全スイッチを優先的に使用する
■扉の取り外しを防止すればセーフティ・リミットスイッチを使用できる
■汎用リミットスイッチは使用してはならない

安全スイッチの特徴

以下、安全スイッチの構造上の特徴について説明します。

<無効化の防止>
安全スイッチのアクチュエータ挿入口は、ねじ、針、板状の金属片や、キー、コイン、ドライバなど日常的に用いる工具では人為的な操作ができず、専用のアクチュエータでのみ操作が可能です。従って、扉を開けた状態でこれら工具による無効化はできないので、機械はスタートできず安全を維持できます【図8】。

図9:直接回路動作機構であることを示す矢印マーク

<直接開路動作機構>

前述の通り安全スイッチは必ず直接開路動作機構のNC接点を使用しており、ガードが開くとNC接点を強制的に引き離します。この機能は、スイッチの接点近傍に矢印マークを使って表現されます【図9】。製品を使用する場合に確認すべき重要なマークです。

一方、NO接点は引き外しの際は【図7】に示したように、圧縮ばねの復元力だけに頼っています。ばねが折れたり、圧縮ばねの復元力より溶着力の方が大きかったりした場合、接点は閉じた状態となります。従ってNO接点は、その構造的な理由から直接開路動作機構にはなりません。

使用する上での注意事項

安全スイッチは、スイッチそのものが取り外されること(無効化)を防止するために、作業時に近づきにくい位置か目立たない位置(扉の裏側など)に取り付ける必要があります。さらに、溶接、リベット、一方向ねじなど、一般的な工具では容易に外されない方法で取り付けることが推奨されます【図10、11】。

安全スイッチの新しい技術

図12:安全スイッチの新しい技術